研究分担者 |
桑島 正道 大阪大学, 医学部, 講師 (00205262)
花房 俊昭 大阪大学, 医学部, 助手 (60164886)
難波 光義 大阪大学, 医学部, 助手 (00183533)
嶺尾 郁夫 大阪大学, 医学部, 助手 (40243240)
中島 弘 大阪大学, 医学部, 助手 (50252680)
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研究概要 |
糖代謝律速酵素遺伝子の調節領域に対するインスリンの作用機転はいまだ不明である。そこでインスリン非依存型糖尿病に特有の肝の糖代謝異常を分子生物学的に解明する目的で,モデル動物であるOLETFラットの肝の解糖系および糖新生系律速酵素の酵素活性とmRNAを分析して,次の結果を得た。成績はすべてLETOラットを対照としている。 16週齢より,空腹時血糖は上昇,血漿インスリンも上昇し,体重の増加が認められた。解糖系のグルコキナーゼ(GK)とピルビン酸キナーゼ(PK)の酵素活性は増加し,mRNA量も増加した。しかしホスホフルクトキナーゼ(PFK)は酵素活性,mRNAは不変であった。一方,糖新生系のグルコース-6-ホスファターゼ(G6Pase)とフルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(FBPase)の酵素活性は増加していたが,ホスホエノールピルビン酸カルボキシナーゼ(PEPCK)活性は不変であった。なおFBPaseとPEPCKのmRNA量は不変であった。 肝の解糖系と糖新生系の律速酵素は,ホルモンや食餌の変化に呼応してreciprocalに活性活動するのが通常であるが,このモデルラットでは両代謝系とも酵素活性が亢進するという奇異な結果が得られた。つまり解糖系酵素に対してはインスリン作用が発現し,糖新生系酵素に対しては反インスリン作用が発現している。インスリン非依存型糖尿病を特徴づけるこの現象のメカニズム解明が今後の課題となるが,その候補として,酵素遺伝子に至る細胞内インスリン作用伝達機構の異常,あるいはインスリン作用と反作用を併せ持つ未知の生理活性物質の存在などが示唆される。
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