I型(インスリン依存型)糖尿病の発症には、遺伝、自己免疫、ウイルスの3者の関与が想定されている。我々は従来より、モデル動物NODマウスの膵β細胞において、ウイルス粒子が存在することを報告してきたが、本研究では、NODマウスにおけるウイルスのクローニングを行い、その発現様式について検討した。対象として4、6、12週齢のNODマウスを用い、対照としてNONマウス、ICRマウス、B10.G.D.マウスを用いた。方法は、NODマウス膵RNAからRT-PCRによるcDNAクローニング、次いで、ゲノムからPCRクローニングを行った。その結果、今まで報告のないNODマウス特異的なレトロウイルス(NODV)がクローニングされた。NODVは、NODマウスゲノムに組み込まれた内因性ウイルスであること、そのmRNAはNODマウス組織において膵のみに発現していること、その発現は膵島炎の開始時期である4週齢で最大であること、LTRがNODマウス膵β細胞由来NIT-1細胞において転写活性を有すること、が明らかになった。以上の成績は、NODマウスの膵島炎および糖尿病の成立への関与が推定されるウイルスの構造と発現を明らかにしたもので、その機能の分析により、I型糖尿病の発症におけるウイルスの役割に迫り得るものと思われた。
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