研究概要 |
前年度IV型コラーゲンのα4(IV)鎖をコードするcDNAを得、その性質を調べたが、今年度はこのcDNAを5'側にさらに延長して、α4(IV)ポリペプチドほぼ全領域をコードする重複cDNAクローン複数を単離することができた.これらのクローンの性質を調べた結果、アミノ酸の一次構造はα2(IV)鎖に最も類似しており、α1(IV),α3(IV),α5(IV)鎖とはホモロジーが低かった.興味あることは、α1からα5までの5つのコラーゲン鎖をコードするmRNAは、α4を除いて殆ど同じ大きさの6.5kbほどであるのに対して、α4(IV)mRNAは有意に、アガロース電気泳動によって遅い泳動度を示した.換言すると、4α(IV)鎖mRNAが6.5kbであるのに対してα4(IV)mRNAはおよそ10kbのサイズであると思われる.これが単に5'もしくは3'UTRの長さの違いなのかもしくはα4(IV)ポリペプチドをコードする部分の長さの違いによるのか現在検討中である. またα4(IV)cDNAを延長する際に得られた副産物として、さらに新しいcDNAを単離し、これがいままでに存在するα1からα5鎖と異なるがIV型コラーゲン鎖に属すると同定されるのに充分な条件を満足していることがわかり、私どもはこの新しいIV型コラーゲンポリペプチドをα6(IV)鎖と命名した.cDNAの塩基配列を決定することによって、このα6(IV)鎖のアミノ酸一次構造を決定することができた.特にこのα6(IV)鎖NC1ドメインは他の5α(IV)と同様12個のシステインを有し、他のIV型α鎖と一緒に分子を形成することができる可能性を含んでいる.この塩基配列およびアミノ酸配列を他のα1からα5までのそれと比較すると、偶数系列のα2,α4,α6鎖が類似して、奇数系列のα1,α3,α5鎖がよく類似していることがわかった.これらの二つの系列の遺伝子が同一の起源の遺伝子から分かれてから進化したことが類推される.さらに興味あることは、このα6(IV)鎖をコードする遺伝子が、何とα5(IV)鎖をコードする遺伝子と隣接して存在し、しかも1500bp以内の距離に反対向きに並んでいることがわかった.私どもはこの両遺伝子上流域を含む遺伝子断片を単離し、構造を調べることにより、二つのプロモターで制御される二つのα6(IV)転写産物が存在することがわかっている.
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