研究概要 |
ヒト胎盤膜上にソマトスタンチン受容体の存在をレセプターアッセイとクロスリンクを用いて確認し、その精製を行い、次の成績を得た。 1.ヒト胎盤より膜分画を調製し、Triton X-100. CHAPS,digitonin,cholic acidなどの各種界面活性剤で可溶化された分画と^<125>I標識ソマトスタチンを用いた結合実験では、10mM CHAPSによりソマトスタチン結合能を有する蛋白が可溶化され、可溶化蛋白への標識ソマトスタチンの結合は非標識ソマトスタチンにより阻害された。2.膜分画と標識ソマトスタチンを架橋剤を用いてクロスリンクを行うと、SDS-PAGE上、約60Kdと約30Kdの2本のバンドを認めた。3.膜分画へ標識ソマトスタチンをクロスリンクし、界面活性剤により可溶化後、非変性下の条件で行ったゲルろ過では、この蛋白は660Kd以上の高分子として溶出されたが、凝集塊を形成していることが考えられ変性化の条件で検討中である。4.受容体蛋白をアフィニティカラムとWGAカラムにより銀染色上ほぼ単一のバンドにまで精製した。今後、得られた蛋白の純度を等電点電気泳動、2次元電気泳動、HPLCにより確認した後、気相シーケンサーを用いてそのアミノ酸配列を決定し、クローニングのためのDNAプローブを作成する。5.一方、ヒト膵ソマトスタチン受容体cDNAがG蛋白連結受容体のアミノ酸配列の相同性を用いてクローニングされたため、その情報を基にPCRにより受容体遺伝子の断片を増幅し、これをプローブとして、胎盤より抽出したmRNAを用いてOKayama-Berg法により作成したcDNAライブラリーのスクリーニングを行っている。相同性を用いて得られた受容体遺伝子と蛋白の1次構造の情報を基に得られる受容体遺伝子が同一のものであるか、また膵、下垂体、胎盤などの各組織に発現している受容体遺伝子に構造的差異が存在するかは興味深い重要な点であり、詳細に検討を加える予定である。
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