研究概要 |
ヒト胎盤膜より調製した膜分画より10mM CHAPSを用いて受容体蛋白の可溶化を行った。標識ソマトスタチンと可溶化受容体のクロスリンクを行うと、SDS-PAGEでは複数のバンドを認め、ゲル濾過では660Kd以上の高分子として溶出された。次にヒト、ブタのソマトスタチン受容体遺伝子のPCR-クローニングを行った。得られたプローブによるサザーンブロットで、ヒト1型受容体はEcoRIで20Kb,PstIで2.7Kb,BamHIで7Kbの一本のバンドを認め、ヒト2型受容体ではEcoRIで30Kb,PstIで11Kb,BamHIで30Kbの一本のバンドを認め、いずれもシングルコピー遺伝子と考えられた。ブタ遺伝子ライブラリーのスクリーニングにより得られたブタ2型受容体遺伝子は1107bpのopen reading frameをもち、369アミノ酸残基の蛋白をコードしていた。ブタ2型受容体は7カ所の疎水性領域を有し、7回膜貫通型のG蛋白共役受容体に属すと考えられ、この型の受容体に特徴的な第二細胞内ループのAsp-Arg-Tyr構造、Cys残基の配置ならびに糖鎖結合部位が認められた。受容体の発現の検討では、正常組織では1型受容体は胃、腸に、2型受容体は下垂体、大脳、リンパ球で高い発現を認めた。各種内分泌組織における検討ではバセドウ病甲状腺、甲状腺腺腫、甲状腺乳頭癌で2型受容体の強い発現を認め、甲状腺髄様癌、褐色細胞腫で1型受容体の強い発現を認めるなど、受容体のサブタイプの発現は個々の症例により相違が認められた。腫瘍におけるソマトスタチン受容体遺伝子変異をSSCPとTGGEを用いて調べた結果、甲状腺腺腫1例、腺腫様甲状腺腫1例、甲状腺乳頭癌2例、副甲状腺腺腫1例、ACTH産生細胞株1例に移動度の異なるバンドを認め、塩基配列を決定したところ、2型受容体のコドン188にミスセンス変異が同定された。
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