研究概要 |
我々は、これまでに平滑筋を用いたバイオアッセイ法により、脳・脊髄,心臓,副腎などより多くの生理活性ペプチドの単離、構造決定に成功している。今回本研究において進めている腎における新しい平滑筋作動性ペプチドついては、これまでの検索によりSP-IIおよびSP-III画分に、分子量の異なる3種類の新しい活性ピーク(MW.8,000, 6,000, 4,000)が検出できた。本年度は、ブタ腎臓10kgを出発材料として単離、精製を行っているが、これらの活性ピークはイオン交換のクロマトグラフィー、逆相HPLCにおいても、腎臓に存在する既知の平滑筋作動性ペプチドであるアンジオテンシン、CGRPとは明らかに異なる位置に溶出されることから、これまで未知の新しい生理活性ペプチドであることが確認された。MW.6,000の活性ピークは酸性において不安定であるため、現在安定な条件下での精製を検討している。しかし、これまでのニューロメジン類およびナトリウム利尿ペプチド類での経験を生かせば、早期の単離、構造決定も可能だと考えている。 一方、並行して進めていたヒト由来培養細胞の産生する平滑筋作動性ペプチドの研究において、フォルボールエステル(TPA)で刺激したヒト単球由来白血病細胞(THP-1)より強力なヒヨコ直腸弛緩活性を示すペプチドを単離した。構造解析の結果、このペプチドがヒトCNP-29であることを明らかにした。ヒトCNPのアミノ酸配列は、これまで遺伝子のDNA構造解析によってのみ推定されていたが、今回ペプチドとして初めて同定できた。またCNPはこれまで中枢神経系にのみ局在し、神経ペプチドとして作用していると考えられていたが、今回の同定により、血管平滑筋の増殖抑制等の末梢での新しい機能が期待できるものと考えられる。
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