研究概要 |
1.トロンボキサンA_2(TXA_2)受容体異常症ならびに同受容体の分子構造と機能の相関に関する研究:前年度までに検索したTXA_2不応症と同様な血小板機能異常を呈する別家系の症例について検討し、両者に同様なTXA_2受容体のミスセンス変異(Arg^<60>→Leu)を見出した。この変異受容体を用いた発現実験では、変異受容体のリガンド結合能は正常であるが、それを介するホスフォリバーゼCの活性化に障害が認められ、患者血小板の機能異常に一致していた。以上の成績から本変異がTXA_2不応性の原因でありArg^<60>がTXA_2受容体機能に重要と考えられた。 2.12-リポキシゲナーゼ(12-LOX)欠損症に関する研究:12-LOX活性が欠損し、同酵素蛋白が存在する一症例を見出し、抗12-LOXモノクロナル抗体による免疫沈降物についての解析などから酵素蛋白の質的異常が示唆された。現在、本症例の12-LOX cDNA塩基配列を解析中で、3′側2kbの配列には異常を認めず、5′側はそのRT-PCRにおいて正常人では増幅されるが、本症例では増幅されないためcDNA5′側の塩基配列異常が推察される。 3.血小板のコラーゲン受容体(p62)とそれを介する血小板機能発現機序に関する研究:血小板のコラーゲン受容体と考えられる膜糖蛋白(p62,GPVI)の構造を解明する目的で、抗p62抗体を用いて血小板の粗p62分画のアフィニティー精製を行い、N末端アミノ酸分析を行ったが有意なシグナルが得られなかった。今後は、プロテアーゼ処理等による内部シークエンスの解析も必要と考えられ、新たな精糖プロトコールを準備している。p62を介する血小板機能発現機序の検討では、p62刺激時に150kD〜、135kD、72kD等の複数の蛋白質にチロシン燐酸化が認められるとともにチロシンキナーゼ阻害剤により抗p62抗体による血小板機能発現が抑制されたことから、p62を介する刺激伝達にはチロシン燐酸化反応が深く関与することが示唆された。
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