研究概要 |
今回の研究実績の概要は以下の通りである。 1.SV40Ori(-)DNAをトランスフェクトして得た不死化したヒト〓帯血管内皮細胞株(HUVE'SVO1と命名)は,細胞膜表面にトロンボモジュリン(TM)は存在しないが,TMのmRNAは存在することが判明した。この詳細なメカニズムを現在検討中である。 2.ヒト〓帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)上のTM分子は,IL-1,TNFとのインキュベーションで,約50%減少する。この減少はTMのmRNAの減少を伴っている。 3.内皮細胞上に今回見い出されたシグナル伝達型のトロンビン受容体とTMはクロストークする可能性が示唆された.すなわちトロンビン受容体(TR)はトロンビンによってN末端側が退定分解を受け,内在しているアゴニスト部分が自分自身に働いてトロンビンのシグナルを内皮細胞へ伝達する。我々はこの内在性アゴニスト部分に相当する14個のアミノ酸から成るペプチドを合成し,HUVEC,血小板に対する影響を調べたところ,アゴニストペプチド刺激でTMが減少し,PAI-1,endothelinの放出が増加することが判明した。このことはTRを介し,HUVECが活性化されること,TRとTMとの間にはクロストークの関係があることを示唆するものといえる。 4.各種腎疾患において腎バイオプシーから得たTMを免疫染色したところ,TMは正常な腎系球体内には発現していないが,膠原病の際には発現することが明らかとなった。このTMの発現は,系球体への免疫複合体の発現とよく相関していた。恐らくTMの発現は一種の生体防御反応の結果と考えられる。
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