研究概要 |
高地適応のモデル動物の開発に関する研究として,主として次の3テーマについて研究を行った。(1)高地適応能の種間差に関する研究,(2)高地適応能の系統差に関する研究(3)HPV反応の減弱現象に関する研究である。(1)はラット,スンクス,ナキウサギの3種について,右心室肥大の大きさ,ヘマトクリット,肺動脈壁の組織学的変化などについて比較検討した。その結果,完全高地適応動物と考えられるナキウサギは,右心室肥大の程度も極めて小さく,肺動脈壁の厚さも極めて薄く,ヘマトクリットも有意に低い特徴を備えていることが明らかとなった。それに対して食虫目のスンクスはラットとの間に有意差は無く,高地適応能が勝れている動物とは言えないことが明らかとなった。(2)のテーマに関してはラットのLEW/SSN,F344/N,WM/MS,WKAH/HOK,WF/N,およびSDの6系統合計54匹について,摘出潅流肺標本を作成して,HPV反応の大きさを比較検討した。その結果,HPV反応の最も鈍い系統はF344/Nで逆に最も反応の顕著な系統はWKAH/HOKであった。両系統間ではその反応性に2倍以上の差が認められた。(3)のテーマに関しては,寒冷暴露によるHPVの減弱現象について検討した。方法は摘出潅流肺標本およびAwake ratの2系統の実験を行った。その結果,寒冷暴露(0±1℃,6日間)によってHPVは有意に減弱され,またこの減弱現象は暴露解除後比較的初期に回復し,解除後3日目ではむしろ増強することが明らかとなった。以上の結果をふまえて高地適応のモデル動物の開発に寄与したい。
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