研究概要 |
イースト菌のリポアミド脱水素酵素を結晶化させ,高エネルギー物理学研究所の放射光を利用して巨大ワイセンベルグカメラで測定したX線回折強度データは,分解能が3.0A^^°(2.5A^^°,65%)で,Rmergが5%と質の高いものであった.以前に4軸型回折計で測定したデータ(分解能4.5A^^°)の時は,1次構造の相同性が高いグルタチオン還元酵素の構造を用いて分子置換法で決定した.今回の結晶は空間群が同じであるにもかかわらず,単位格子のb軸の長さにかなりの違いが見られたので,構造決定をやり直した.その結果、分子の傾きは以前と同じであるが,単位格子内の分子の位置が変化していることが明らかになった.確認のために逆空間だけでなく実空間における分子置換法も適用したが,結果は同じであった,この構造をエネルギー極小化さらに分子ダイナミックを含めて精密化した結果,分解能3.5A^^°でR=30.4%を得た.現在,三次元コンピューターグラフィックスで分子モデル表示し,電子密度と重ね合わせてアミノ酸のインサーションとデリーションを確認しながら,ペプチド鎖のコンフォメーションの調節,修正ならびにアミノ酸側鎖の付加を行っている.以上の結果を平成5年8月中国北京で開催される国際結晶学連合会議で発表する予定である.一方,複合体の構造研究のために,イースト菌をフレンチプレスで2回粉砕し,膜成分からピルビン酸脱水素酵素複合体を溶出した後,等電点沈殿およびPEG沈殿,超遠心密度勾配法で精製を行った.しかしこの方法では収率がそれ程高くなかった.結晶化では多量のサンプルを必要とするので,イオン交換クロマトを使うなど精製方法の改善を検討中である.
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