研究概要 |
本年度は,成長期ラットに質の異なる低エネルギー食を約1カ月間投与し,自由運動させた群とさせない群とで,低エネルギー食と運動の体組成と骨塩代謝に及ぼす影響を検討した.毎日,飼料摂取量,体重を測定した.体重増加量は,20%カゼイン食を自由に摂取した対照群に比較し,食事量を70%に制限した70%制限食群では,有意に低い値となった.エネルギーのみ70%に制限し,タンパク質やビタミン,ミネラルは対照群と同量摂取した低エネルギー食群でも同様であった.低エネルギー食で自由運動させた群では,さらに低値を示した.運動群では1日に約10kmも走行し体重増加も抑制された.腹壁脂肪と性殖器周囲脂肪重量の合計は,運動群で他の群の1/3以下であり,成人病を併発しやすいと言われている腹腔内脂肪の蓄積を,自発運動により抑制する効果が認められた.しかし,体脂肪率(小動物用体成分測定装置)の成長に伴う変化は各群間に差は認められなかった.大腿骨中の灰分,カルシウム,リン量と骨強度は,終体重とよく似た傾向を示し,実験前よりすべての群で有意な増加を示した.対照群に比較し,70%制限食群では,骨重量,骨破断力とも有意に減少し,低エネルギー食でも,70%制限食と同様であった.運動群では,骨強度ともさらに有意な減少を示した.骨強度は,終体重,除脂肪組織重量,体脂肪重量,大腿骨重量,骨長,骨中灰分,カルシウム,リン,マグネシウム量全てと有意な正の相関が認められた.70%に食事量を制限すると,骨重量や骨強度が1カ月間の飼育であっても大きく影響を受けること,さらにタンパク質やビタミン,ミネラルを添加しても,骨重量や骨強度は回復せず,エネルギー制限の影響が大きいことを確認した.さらに,自発運動であっても,低エネルギー食で,過度の運動することは,骨の発育や骨強度に悪影響を及ぼすことが明かとなった。
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