筋線維組成は運動能力に影響を及ぼす要因であり、先天的にかなり決定されているのではないかと考えられているが、筋線繊組成の遺伝的影響についての報告は少ない。これまで、腓腹筋深層部の遅筋線維構成比の高いラットの選択交配を行ったとき、筋線維組成のばらつきのうちのどの程度が親から子へ受け継がれていくのかについての報告があるが、コントロール群が存在しなかったという問題点があり、また速筋線維構成比(%FT線維)に対して同様の検討を行った報告はない。そこで本研究では、腓腹筋深層部の速筋線維構成比の高いラットについて、7世代にわたる選択交配及びランダム交配(コントロール群)を行い、両者を比較することにより筋線維組成に対する遺伝的影響を明らかにすることを目的とした。その結果として、選択交配により%FT線維の平均値は有意に増加したが、コントロール群では特に変化は見られなかった。これよりコントロール群に対する各世代の選択交配群の平均値の増加量である遺伝的改良量を算出したところ、一世代当たり1.49%の値が得られた。また、母集団平均と次世代平均の差を、母集団平均と選択集団の差で除することによって求められる実現の遺伝率として0.29の値が得られた。 以上の結果から、%FT線維は一世代当たり約1.49%づつ増加していき、筋線維組成には弱いながらも確実に遺伝的影響があることが示唆された。また、その程度として親の%FT線維の約29%が子の%FT線維に影響を及ぼすと考えられる。
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