研究概要 |
昨年までの研究により、マクロファージレクチンの細胞質領域に含まれるチロシン残基(Tyr-5)が本レクチンの内在化のシグナルとなっていることが明らかとなった。一方、細胞内チロシン残基は細胞内シグナル伝達系においてリン酸化をうけ機能制御の働きをしていることがよく知られている。そこで本レクチン遺伝子をトランスフェクトしたCOS細胞をホスフェターゼ阻害剤であるsodium orthovanadate,phenylarsine oxide(PAO)存在下または非存在下で37℃、1時間培養したのちアフィニティーカラムにより本レクチンを精製した。精製レクチンをSDS-PAGE後、PVDF膜にトランスファーし、抗ホスホチロシン抗体PY20により検出したところ、ホスフェターゼ阻害剤の存在下でのみ42kDaのバンドが染色された。この結果は本レクチンの内在化反応がTyr-5のリン酸下により調節をうける可能性を示している。 次にラットマクロファージレクチンのゲノム遺伝子の解析を行った。PCRクローニングと遺伝子断片をスクリーニングする方法により、ゲノム遺伝子クローンを得、構造解析を行った。その結果、本レクチン遺伝子は9個のイントロンを含む10個のエキソンよりなり、このうち細胞内領域のほとんどはエキソン2により、膜貫通領域はエキソン3によりコードされていた。エキソン3、4、5、6、7はオリゴマー形成に関与するαヘリックス構造をコードしていた。エキソン8、9、10は糖認識ドメインをコードしていた。この全体の構造はラット肝アシアロ糖タンパク質結合タンパク質の主要成分RH1-1の遺伝子構造と非常によく似ていた。
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