研究概要 |
MKのジスルフィド結合の位置を次のように決定した:C12-C36,C20-C45,C27-C49,C54-C91,C69-C101。この結果、MKは-S-S-結合で結ばれた2つのドメインから成ることが分かった。マウスMK遺伝子(MK2mRNAタイプ)の上流2kbをCAT遺伝子に結びF9細胞に導入したところ、レチノイン酸処理により、CATの発現誘導が起った。上流2kbの中にレチノイン酸応答性のエンハンサーを見出し、そのコア配列を決定した。コア配列はレチノイン酸レセプターの結合配列と高いホモロジーを示し、実際、レチノイン酸レセプターのヘテロダイマー(RXR・RAR)と結合した。RXRあるいはRARのホモダイマーは結合しなかった。MKは10ng/mlの濃度で、マウス胚の後根神経節と脊髄の神経細胞、そしてマウス胚の中脳のドーパミン作動性神経細胞の生存を促進した。コリンアセチルトランスフェラーゼの活性も増大した。また、マウス胚の上皮細胞の増殖を促進した。なお、アフィニティー精製抗MK抗体を用いてMKの分布をマウス胚で調べ、脳、四肢、あご、骨、消化管上皮に強い発現を認めた。MKがプロテオグリカンであるシンデカン、さらに核タンパク質であるヌクレオリンと結合することを見出した。また、アフィニティークロスリンク法で、85KのMKレセプターと思われる細胞膜タンパク質を見出した。多くのヒト癌でMKの発現が増大する。ことに、ウィルムス腫瘍で6例の手術検体すべてについてMKの発現増大が起った。肝臓がん、食道がん、膵臓がんでもMKの発現増大は顕著であった。アルツハイマー病の患者脳の老人斑も例外なくMKを発現していた。正常脳はMK陰性であった。ラットの実験的脳梗塞に於て、MKが浮腫部分に一過性に、早期に発現した。以上のようにMKはレチノイン酸支配下の重要な成長因子で、ヒト疾患との関連も興味深い。
|