研究概要 |
前年度までに、マウスDNAポリメラーゼalpha/プライマーゼ複合体を構成する4つのサブユニット、180K,68K,54Kおよび46KのcDNAをクローニングし、全塩基配列を決定、更に増殖誘導時におけるmRNAレベルの変化を調べ、これらの遺伝子が協調的な発現制御を受けていることを示した。そこで、これら4つの遺伝子の発現調節の機構を調べるために、それぞれの遺伝子プロモーター領域をクローニングし、塩基配列を決定した。4遺伝子とも転写開始点から300bp以内の領域に、1〜2個のE2F結合配列および10〜14bpからなるパリンドローム配列と1個のAP1配列が存在した。また触媒サブユニットである180Kの遺伝子上流域は、ヒトDNAポリメラーゼalphaの180Kの上流域と高い相同性を示し、特に転写開始点から200bp以内の領域では83%もの相同性が見られた。 一方、蛋白質レベルでの解析を行うため、各cDNAを大腸菌あるいは昆虫細胞で過剰発現させ、精製した各サブユニットを抗原としてポリクローナル抗体を作成した。免疫細胞染色の結果、180Kと68Kのサブユニットに比べ、54Kサブユニットは細胞周期における変動が大きかった。またサブユニット間の相互作用を共沈降反応等によって調べたところ、54Kサブユニットが他のサブユニットすべてに親和性を持つことを見い出した。さらに、発現・単離した180KサブユニットにはDNAポリメラーゼ活性が、46Kサブユニットにはプライマーゼ活性が、それぞれ検出され、これまでに考えられていたことが実証された。
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