研究概要 |
プロテインキナーゼF_A(PKF_A)は不活性型のプロテインホスファターゼ1を活性化する酵素として発見されたセリン・スレオニン型のプロテインキナーゼである。本研究では、チロシンキナーゼの活性をもつ受容体の活性化と、その後に起きる蛋白質のセリン・スレオニンのリン酸化,脱リン酸化をつなぐものとしてPKF_Aを想定し、インスリン受容体刺激後の情報伝達系の解析を試みた。 まず、PKF_A活性の測定系を構築し、インスリン受容体刺激後のPKF_Aの活性の変動および、細胞膜から細胞質への移行を調べたが、調べた系全てでその変化が観察されなかった。そこで、チロシンキナーゼとセリンスレオニンキナーゼを結ぶものとしてMAP(mitogen activated protein)キナーゼに注目し、その活性化の情報伝達系をSwiss3T3細胞を使って解析した。 増殖を停止したSwiss3T3細胞の培養系にEGFを添加すると、添加後2、5分をピークとするリン酸化活性の上昇が観察され、FPLC MonoQカラムにかけることによりこの活性の上昇はMAPキナーゼの活性化によるものであることが確認された。EGFの他、ホルボールエステル、トロンビン、ブラジキニン等でもMAPキナーゼの活性の上昇が観察され、この上昇とDNA合成の誘導とに相関がみられた。このうちトロンビンによるMAPキナーゼの活性化を詳細に検討し、この活性化の経路には、GTP結合蛋白質、PI-3キナーゼ、Cキナーゼが関与することを明らかにした。また、この研究と平行して、リン酸化カスケードの最終標的の一つとしてDNAトポイソメラーゼIIに着目し、そのリン酸化を詳細に解析した。
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