雄配偶子が、分化するときに、放射線(ガンマー線)突然変異感受性がどのように変動するかを詳しく調べ、さらに優性致死突然変異体ではどのようなDNA変異が起こっているかをAP-PCR法によるDNAフィンガープリントによって解析した。そのために、8年の歳月をかけて自家開発してきたメダカ特定座位法を用いた。 1。遺伝学的指標として優性致死突然変異を用いると、野性型雄メダカに致死量以下のガンマー線を照射後1〜3日間に得られる受精卵の優性致死率が最も高く、以後日にちを経るに従って単調に減少した。このことは、ガンマー線による優性致死突然変異誘発に関しては、精子が最も感受性が高く、以下精細胞-精母細胞-分化精原細胞-精原細胞と細胞が未分化になるほど単調に感受性が低下することを示している。 2。総突然変異誘発に関しては、精子期と精細胞期で感受性が最も高く、両者間で有意な差はない。精母細胞期、分化精細胞期では感受性が低下し、精原細胞期になるとさらに著しく低下した。 3。生存突然変異誘発に関しては、統計的には有意とはいえないが精細胞期で精子期・精母細胞期に比べて約2倍以上高い値が得られた。分化精原細胞期は多少感受性が上がるが、精原細胞期になると極めて低い値しか得られなかった。 4。DNAフィンガープリントで遺伝的な多型が見られる1組の雌雄メダカ系統を使い、野性型雄メダカをガンマー線で照射し、正常雄メダカと交配して受精卵を得た。個々の優性致死胚と同朋正常胚からゲノムDNAを抽出し、pBRを任意プライマーとするAP-PCR法で個々の胚のフィンガープリントをえ、雄親由来バンドの変化を定量的に比較した。その結果、優性致死胚のDNAでは雄親由来DNAバンドの消失頻度が、正常同朋胚DNAに比べてより高いことが明らかになった。
|