これまでの研究で、大腸菌のcrp遺伝子は負の自己調節機構を転写レベルで有していることを明らかにしてきたが、今回、CRP-cAMPがある条件下では、crpの転写を促進すること、すなわち正の自己制御機構の存在をあらたに発見した。 crpプロモーター領域には、転写開始点下流にCRP結合部位が存在しており、ここにCRP-cAMPが結合すると転写の抑制が起る。一方、crpの転写開始点上流約60bpの位置に第2のCRP結合部位が存在する。この部位(site2)のCRP-cAMPとの結合力は、第1の部位(site1)のそれに比べ弱いことをまず明らかにした。site2へCRP-cAMPが結合する条件下では、crpの転写の抑制が回復し、さらに促進が起ることをin vitro転写実験でみつけた。site2に変異を導入し、CRP-cAMPが結合できなくなると、CRP-cAMPによるcrp転写は、抑制のみで促進は完全に消失した。このことから、CRP-cAMPがsite2に結合すると転写の活性化が起ることが結論できた。したがって、crpの転写は、site1による負の自己制御とsite2による正の自己制御のバランスによりなりたっていると結論した。wild-typのcrpプロモーターおよびsite2変異プロモーターのin vivoにおける解析も、この結論を支持した。 グルコースが細胞内のCRP量を低下させること、およびこの低下がカタボライト抑制の原因の1つであることを証明した。
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