真核生物の複製に要求されるDNAヘリカーゼの検索を目的としてヒト培養細胞抽出液よりDNAヘリカーゼの分画を行った。まず最初にDNAポリメラーゼαと相互作用するものを検出した。これは、抗DNAポリメラーゼαカラムに結合するタンパク質のなかで、0.5M NaClで溶出される分画の中に含まれる。このDNAヘリカーゼの性質を解析した結果、3'-5'の方向性を持ち、ネイティブな分子量は160kダルトンであった。しかしながら、精製される量が微量であるため、このタンパク質を電気泳動上で検出するに至っていない。さらにこの研究と平行して、in vitroの複製反応を応用して、直接プラスミドライブラリーから複製開始点を単離する研究を行った。この結果、精製したDNAポリメラーゼα/プライマーゼとLargeT抗原に依存してDNA合成を開始するDNA配列を検出した。この配列はプラスミド上で一本鎖になってDNAヘリカーゼ等の複製タンパク質を鋳型DNA上に取り込む機能を持つと考えられる。そこでこのDNA配列をつかってLargeT抗原のDNAヘリカーゼ活性の代りをする細胞由来のDNAヘリカーゼの検索を行った。これまでにヒト培養細胞の核抽出液より約7種のDNAヘリカーゼ活性を検出し、これらのDNA合成活性促進効果を検討した。しかしいずれのDNAヘリカーゼもこのような活性を持たなかった。これは、これらの酵素の純度、精製量が不十分なことが一因と考えられる。現在、いくつかのものについてより大量の出発材料から精製を行うとともに、さらに未同定のDNAヘリカーゼの検索を続けている。
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