フッ素イオン耐性変異は、古典遺伝学的手法による基本的な部分を完成し、論文にした。また、フッ素イオン耐性変異が、ある条件でdauer幼虫形成に影響を与えることを発見した。これは、フッ素イオン耐性変異の遺伝子が神経系と関係した機能を持つことを示唆する。分子遺伝学的手法による研究では、5つの遺伝子のうちflr‐1とflr‐3のゲノムDANおよびcDNA(部分長)をクローニングし、解析した。flr‐3は、新しいファミリーのタンパク質キナーゼと思われる。これは、フッ素イオン耐性がシグナル伝達関連という予想を支持する。また、5′側の異なる2種類のcDNAが得られ、alternative splicingの可能性が示された。 clr‐1様変異のうち、未知の遺伝子の実体を知るために、その1つlet(ut102)の遺伝子断片を、トランスポゾン・タギング法によりクローニングした。さらに、その断片を含む様々な長さの野性株ゲノムDNAクローンを変異株に導入し、変異表現型の抑圧に必要な最小部分を決定した。このDNA断片(4.4kb)の全塩基配列を決定中だが、現在まで既存の遺伝子とのホモロジーは見つかっていない。今後は、この遺伝子の発現部位を調べて変異の標的器官を探し、種々のシグナル伝達遺伝子の変異によるこの遺伝子の発現の変化を調べてシグナル伝達系との関連を解明する予定である。
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