酵母には、大腸菌と同じ複製フォークを特異的に阻害する部位が知られている。それはrRNA遺伝子の繰り返し構造単位内、詳しくは35SrRNA遺伝子転写単位の3'末端付近に位置しており、その転写方向とは逆方向の複製フォークのみを阻止すること(極性)が知られている。本研究の目的は、このフォーク阻止システムの機構と機能を明らかにしようとするものである。まず我々はこの阻害部位がゲノムばかりでなく、プラスミド上においても極性のフォーク阻害活性を有するすることを見いだした。これをフォーク阻害活性のアッセイ法に応用することで、それで不明であった阻害に必須な最小領域(約100bp)を決定し、その部位をSOGと名付けた。おもしろいことにその部位は、35SrRNA転写のエンハンサーの隣に位置し、且つ相同組換えのホットスポット(HOT1)に必須な2つの領域の一つ、E領域に含まれることが判明した。SOG部位でのフォーク阻害の生理機能を知るため、更にフォーク阻害活性とHOT1活性との関係を知るため、HOT1活性を失った変異株を多数分離し、それらのSOG部位でのフォーク阻害活性の有無を調べた。その結果、その中にフォーク阻害活性を失った複数の独立した変異株を見いだした。このことは、HOT1の示す高い組換え活性のためには、SOG部位でのフォーク阻害が起こることが必須であることを強く示唆している。これらの変異株の利用と解析から、酵母の複製フォーク阻害システムについての残された問題を近い将来明らかにできる見通しがたったと考えている。
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