研究概要 |
脂質平面膜法を検定系として、ウサギ骨格筋筋小胞体チャネルタンパクの生化学的精製に取り組んできたが、その結果、分子量138k及び100kのタンパクのみを含む分画にC1チャネル活性があることを見い出した。138kタンパクの部分アミノ酸配列を数カ所について決定し、相同性の検索を行ったところ、筋小胞体膜タンパクでありカルシウム結合機能を持つと報告される160kタンパクに、全く同一の配列があることが分かった。当初、共通の遺伝子から異なるスプライシング制御を受けて作られたものと思われたが、さらに、生化学的解析を行ったところこれら2つのタンパクは全く同一のものと判明した。分子量の違いは、前に160kタンパクの報告を行ったグループの算定ミスである可能性が高い。この138kタンパクと他の筋小胞体タンパクとの相互作用を見るため、138kタンパクを高度に精製し、他のタンパクとの結合を調べたところ、100kタンパクと結合した。さらに、その100kタンパクを平面膜に再構成するとチャネル活性が見られることから、当初の予想通り138kと100kタンパクは複合体をなしてチャネルを形成している可能性が高い。次に、138kタンパクの特異的抗体を作成して、筋小胞体ベシクルのイオン透過性に及ぼす効果を調べたところ(光散乱法による)、KCI透過の比較的遅い成分を阻害することが分かった。 脂質平面膜法を用いて、ウサギ骨格筋横行細管(T-tubule)に存在するC1チャネルの電気生理学的解析を行った。その結果、T-tubule膜には単一チャネルコンダクタンス40pSのバックグラウンドタイプ(静止電位付近でも高い開確率を示す)C1チャネルが存在することが分かった。このチャネルは電位依存性陰イオンチャネルのブロッカーとして一般に知られる9-AC,DIDS,SITS,EAで阻害されることが分かった。さらに、気管上皮細胞のC1チャネル阻害剤として開発されたIAA-94によってもμM程度の濃度でブロックされることが分かった。さらに、このチャネルを阻害する抗体を作成し、その結合タンパクを調べたところ、分子量約90kのタンパクであることが分かった。
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