研究課題/領域番号 |
04455004
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小田 晋 筑波大学, 社会医学系, 教授 (90049156)
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研究分担者 |
佐藤 親次 筑波大学, 社会医学系, 講師 (90162437)
土本 武司 筑波大学, 社会科学系, 教授 (30207401)
山上 皓 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (60107315)
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キーワード | 司法精神医学 / 精神鑑定 / データベース / 刑法学 |
研究概要 |
本研究の目的は(1)司法精神鑑定における鑑定人と法律家の判断過程を解析し、その妥当性を検討して司法精神鑑定の基準を明らかにすることである。次に(2)供述の信用性の客観的検討も研究目的の一つである。当該年度の実績としては(1)1件当り260項目からなる鑑定例200件のデータ入力をほぼ終了させた。(2)小田、山上、土本の三者間で診断、犯因、責任能力の判定結果を照合するための検討会を持った。(3)データベース作成中に得られた知見から、あるいはデータベースを活用することによって以下の結果を得た。(1)酪酊犯罪では被鑑定人がよく「記憶がない」と供述することがある。「妻を殺害したアルコール依存症者の精神鑑定例-供述心理学的アプローチの試み-」と題する論文で事例を通してこの供述心理学の有用性を指摘した。(2)「母親による新生児殺と乳児殺」で被鑑定人である母親を精神病理学的に検討し、彼女らの孤立状況が犯因として大きいことを指摘した。(3)Inducing DSM3-R and ICD-10 to Judgment on Forensic Psychiatry and It′s Effectで日本の精神鑑定に精神障害の国際分類を導入する意義を指摘した。 (4)犯因諸項目から林の数量化3類を用いて、精神鑑定事例群を分類した結果、完全責任能力群、限定責任能力群、責任無能力群が明確に分けられることが見いだされた。このことは、責任能力判定が恣意的にされるのではなく、鑑定人の経験や一定の慣例によってなされていることを実証するものである。今後、1)これらの新知見をもとに、モデル事例を作成し、全国の司法鑑定に携わる医師、法律家に配布し、調査票記入依頼をする。2)回答から診断、犯因、責任能力それぞれの判定結果の一致度を検討する。さらに、精神鑑定での診断、犯因、責任能力・行為能力判定の基準となるチェックリストと評価表を作成する予定である。
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