研究概要 |
以下の項目について重要な発展があった。 [高密度プラズマ中の核融合] 白色矮星内部等の超高密度固体中の冷核反応率は温度の上昇とともに励起されたイオンの寄与により基底状態のみを考えた従来の値より増大する。この増大効果を素過程の立場から明らかにした。超高圧金属水素の慣性核融合において,電子遮蔽および核間多体効果にもとづく核反応率の増大,低い熱伝導率による有効なエネルギーの閉じ込め,粘性によるレイリー・テラー不安定性の緩和などの効果を適切に考慮し,これまでに比べ低温高密度の領域でエネルギー解放の新しい窓が存在する可能性を指摘した。また“Nuclear Fusion in Dense Plasmas"と題する総説を執筆し,Reviews of Modern Physics誌上で刊行した。 [多種イオンプラズマの状態方程式,相図と白色矮星の進化] モンテカルロ数値実験と解析的手法を組み合せ,様々な二種および三種イオン混合系の液・固両相における状態方程式を高精度に求め,相図を作成した。さらに得られた知見を白色矮星(C-O-Ne)の内部構造および進化の解析コードに組み込み,新しい相図における化学組成分離の効果が星の内部構造や冷却に及ぼす影響について定量的に議論した。 [高密度プラズマ中のプラズマ・ニュートリノ過程におけるエネルギー損失率] これまで無視されていた電子およびイオンの相関効果を考慮したプラズモンの分散関係を用いて,上記過程によるエネルギー損失率を計算し,その重要性を検討した。 [高密度プラズマ中の不純物原子状態] 真空中でその精度を確認した密度汎関数法に基づく解析手法を用いて,プラズマ中の不純物原子(He,H^-)の基底状態をその存在の有無を含めて遮蔽強度の関数として調べた。
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