研究概要 |
以下の項目について重要な発展があった。 [高密度固相プラズマ中の核融合] 縮退星内部等に見られる高密度固体プラズマ中の冷核反応率は,温度上昇と共に格子振動が励起されるため,基底状態のみを考えた場合に比べ大きく増大する可能性がある。モンテカルロシミュレーションで求めた2体分布関数をもとに格子励起状態を数値的に求め,反応の熱的増大率を求めた。その結果,1)比較的低密度領域では融点近傍で従来の予測値より21桁も大きな増大率を与え得ること,2)融点近傍において固相での反応率は液相における値と連続的に繋がること等を物理的・数値的考察から明らかにした。 [高密度部分電離プラズマの状態方程式と輻射輸送効率] 金属・絶縁体転移近傍での種々の電荷を持った電子・イオン系について,プラズマの状態方程式に対する積分方程式法と束縛電子レベルに対する密度汎関数法の結果を有機的に用いて電離度,状態方程式等を求める理論解析手法を開発した。A1等に対して理論予測値と実験値との比較検討を行なうと共に,高密度星表面にみられるHe,C物質への応用を進めた。 求めた電離度,電子レベルに対して,プラズマ中の束縛電子および自由電子による光子吸収確率を求めた。さらに,その光子分散関係に及ぼす効果を取入れ,輻射によるエネルギー輸送効率の計算を進めた。 [電子液体のスピン分極] 量子フェルミ系である電子系について2次の交換エネルギー項の温度依存性を調べ,その磁気的相図に及ぼす効果は大きく臨界温度を1桁近く高くすることを見いだした。この結果を,電子・陽子混合フェルミ液体,中性子液体に拡張し,予備的相図を得た。
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