研究概要 |
本年度はマメ科において最も原始的な亜科ジャケツイバラ亜科について,根粒非形成種がどのような種であるか,またその非成形の原因をいくつかの角度から検討した。ジャケツイバラ亜科植物を日本国内のさまざまな場所で採集し,これらの根粒形成の様子を観察するとエビスグサ及びハブソウには全く根粒形成が見られないことが明らかとなった。そこで,エビスグサ種子を購入しこれを圃場にて多数の株を栽培し,それらの根粒形成能を観察したが,圃場においても根粒形成は見られなかった。そこで,マメ科植物が生産するフラボノイドの生成量を発芽より経時的に追跡した。フラボノイドはアルファルファなどと同じようなレベルで生産されており,フラボノイドの生産量が少ないことが根粒非形成の原因ではないと判断された。また,水耕栽培により生育された株を用い,近縁種であるカワラケツメイに根粒を形成する根粒菌を大量に接種してその根粒形成を観察したが,根粒の形成は現時点では観察されない。以上のことからエビスグサの根粒非形成の原因は,フラボノイドの生産力や根粒菌に対応するものがいないなどの原因ではなく,エビスグサの遺伝子レベルの特異性によるものであると推定された。現在,種子のEMS処理による変異導入により根粒形成株の出現の有無を観察している。
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