臓器体外維持システム評価のためのハードウェアの製作を行なった。本装置の基本構成は臓器保存箱、潅流ポンプ、酸素化装置、薬剤注入ポンプ、モニター系(酸素濃度、pH、温度、湿度、圧力、酸素消費量)、制御装置とした。 本システムの中で、今年度内に完了する(或は完了している)ものは、臓器保存箱の作成、潅流ポンプ流量の潅流圧コントロールの自動化、温度・湿度モニターの装着と自動制御化、酸素消費量のオンラインモニターの試作とシステム内組み込みである。一部酸素消費量オンラインモニターと薬剤注入ポンプの組み込みは次年度以降に繰り越した。 臓器の物理化学的状態(浮腫など)を計測する手段として、4電極法に基づく電気インピーダンス測定装置並びに微小電極の試作を行った。200μArms、1kHzから200kHzまでの16周波数の電流を流し、電圧を測定する測定条件を設定しラット腎の電気インピーダンスの測定と測定時の密度との相関性をみている。浸透圧の異なる4種の保存液で、4℃にて3時間保存したラット腎の表面から2mmの深さに、0.3mmの白金線を4本並べた電極を取り付けた。外側の2電極に80μA、1kHz〜50kHz(10周波数)の交流電流を流し、内側の電極間電位からアドミッタンス、位相差を測定し、組織の電気的等価回路における細胞外液抵抗(Re)、細胞内液抵抗(Ri)、細胞膜容量(Cm)を算出した。またインピーダンス測定と同じ部位より、3mm角の組織片を切り出し比重を測定した。Ri+Reと比重の間には比例関係が見られ、本法により組織の水分量が定量的に測定可能であることが示唆された。また、Ri+Reは保存液群間で明らかな差を示し、浮腫抑制効果の差を反映していた。Ringer液を使用し30分毎に測定したRi+Reから、時間経過とともに浮腫の進行する様子が観察可能であった。
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