前年度に引き続き河川の沖積地の現地植生調査資料の集積に努めた。本年度の調査は本州中部の日本海側に位置する信濃川、最上川及び阿賀野川の流域を重点域とし、さらに太平洋側に位置する富士川(支流の笛吹川を含む)、豊川や関東地方の相模川、引地川、多摩川、那珂川、利根川(渡良瀬川)等において、随時行われた。 信濃川と最上川の流域では、多様な植物群落で構成される良好な地区がおもに中流域に数カ所ずつ見いだされた。各地区の主要な植物群落としては、日本海側に分布するシロヤナギの優占する河畔林が特徴的であり、さらにオギ、ツルヨシ、カワラハハコ、クログワイ、エゾノサヤヌカグサ、ヤナギタデなどの草本群落を確認した。富士川本流においては釜無川(山梨県)の信玄堤を調査し、急流河川の護岸のあり方について考察した。 低地部の遊水地における植生復元、特に水辺環境におけるビオトープ形成については、神奈川県引地川の大庭における調査によって有力な基礎資料が得られた。本地では遊水地造成後数年の間にヨシ、サンカクイ、コガマ、ヒメガマなどの代表的な湿原植物が侵入して群落を形成しており、またこれらに加え、タコノアシやミゾコウジュなどの絶滅を危惧される種も確認し、水湿地における遺伝子源の保護についての知見が得られた。 次年度にはわが国における水辺植生を体系化し、生態工学的な研究をもとに緑化・修復についての具体的なプロセスを決定し、水辺環境の創造について総括する予定である。
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