研究概要 |
本年度の現地調査は狩野川、神通川、庄川、江ノ川、利根川において行われた。狩野川の河口付近には塩沼地植生のシオクグ群落がみられた。中流域にはオギ群集、メダケ群集、ジャヤナギ-アカメヤナギ群集などが生育していた。修善寺付近から上流には河川敷は狭まり、河川敷の大部分はツルヨシ群集で占められ、斜面部にはケヤキ群落が発達していた。さらに、本川の支流で富士山からの伏流水による柿田川の湧水地植生が調査された。柿田川の清流には、稀少植物であるミシマバイカモが群落を形成し、さらに、セキショウモ、エビモなどのヒルムシロクラスの特徴的な群落が確認された。 神通川および庄川の上流部ではネコヤナギ群集、ツルヨシ群集などが生育していた。また中流部では礫原が広がり、全般的に植生は疎らで、おもにカワラハハコを主とする乾性立地の草本植生で占められていた。下流部ではタチヤナギ群集の他,ヨシ群落,オギ群集が分布していた。 江ノ川では、三次付近の馬洗川との合流付近で調査が行われ、ジャヤナギ-アカメヤナギ群集、ネコヤナギ群集、ツルヨシ群集、オギ群集、オオクサキビ-ヤナギタデ群集など、変化のある植生域の存在が確認された。 利根川では、沼田付近や老神温泉付近にコゴメヤナギの小林分が点在するが、河道の変化が激しいため河辺植生の発達域は一般に狭い。しかし、上流域の片品川流域ではツルヨシ群集を主に、タチヤナギ群集、ヒメヤシャブシ群落、サワグルミ群落など変化のある群落が確認された。また、相股ダムや薗原ダム付近の護岸植生の調査が行われ、今後の河川や貯水ダムなどの水辺環境の回復の貴重な資料となりうるものと考えられる。
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