平成4-6年度における現地調査資料を整理し、その成果を下記の2報告にまとめた。 1.日本の主要河川における植物群落とその配分(奥田)。 水辺環境のなかで、河辺における植物群落の研究は、水辺の緑化・修復に対し重要である。河辺の植物群落は河川の形状によって複雑な組成と配分を示すため様々なケースにおいて現状調査が必要である。本研究では日本列島の15河川の調査結果から42の群落単位を抽出した。さらに、各河川の群落配分のタイプをまとめた。常に洪水の影響を受け、砂礫の堆積する河川では、生育立地は強く乾燥し、栄養塩類の保持も困難な状態にあるため、乾燥に耐えられる群落で構成される。一方、河川の下流域では洲の大部分は一般にシルト質の土壌で構成され、湿性立地に耐えられる植物群落で占められる。このような植生配分を示す河川は、流域の地質がローム質土壌の卓越する場合に起こり、運搬堆積された土砂が排水不良の環境を形成する結果と考えられる。さらに、河川敷に池沼が形成されている場合には、自然のビオトープを形成し、多様性の高い水辺生態系に寄与している。 2.河原植生の保全・管理に係わる群植物社会学的研究-相模川における事例(大野)。 植生景観は地域の生態系の基本的な単位である。本研究では相模川において、群植物社会学的な解析手法により、河原植生を幾つかの群落複合体に分類した。さらに、それらの生態的特徴を、植生自然度と群落数を基礎に判定した。 これらの報告は植生学の分野では基礎的研究を主体としているが、景観形成技術に関する生態工学的な立場からの応用的な特色をもつ考察が加えられている。また、技術的には都市近郊緑地や都市環境の整備等、都市計画の分野にも深い係わりを持ち、特に水辺景観と生態系の保全を重視し、植生を用いた水辺景観の管理、護岸形成、貯水池や遊水池の緑化計画、低湿地の樹林形成や修景などに直接役立てることが出来る。
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