研究概要 |
HLA領域に存在する、ヒトの発生、分化に関わる遺伝子を同定する目的で、HLA-DP領域よりセントロメア側の領域と、クラスII遺伝子とクラスIII遺伝子間の領域についてcDNAクローンやコスミドクローンなどの分離と解析、塩基配列の決定などの解析を行い、前年度までの結果と併せて、これらの領域に合計11個の新遺伝子を同定した。HLA-DP遺伝子よりセントロメア側250kbの領域については、HKE2、HKE4、HKE6のcDNAクローンを分離し、塩基配列の解析を行った。その結果、HKE2遺伝子は、低分子量G蛋白質の活性制御蛋白質である数種のGDSと相同性を示した。また、HKE4遺伝子は、マウスKE4のヒトホモログ遺伝子であり、高分子キニノーゲンを含む種々のhistidine rich proteinと、HKE6遺伝子はマウスKE6のヒトホモログ遺伝子であり、アルコール脱水素酵素や酸化還元酵素とそれぞれ相同性を示した。これらの3遺伝子は、いずれも単一遺伝子であり、これらの遺伝子とその周辺の遺伝的多型性は、EcoRI,Pst I,Hin dIII,BamHI,MspI,TaqIの各制限酵素を用いた限り、見いだされなかった。クラスII遺伝子(DRA)とクラスIII遺伝子(CYP21B)領域間430kbについては、コスミドまたはファージクローンの塩基配列の解析から、TN-X(テネイシン様遺伝子)、グリコシル化蛋白レセプター遺伝子、HOX12遺伝子(ホメオボックス蛋白)、Notch3遺伝子(分化や細胞周期の調節に関与)の4個の遺伝子を見いだした。RAGE遺伝子に関しては、その制御領域およびNotch3遺伝子の3′末端を含む全長約4kbの遺伝子の塩基配列を得た。現在、HOX12遺伝子の構造とその制御領域について解析中である。
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