研究概要 |
本研究は一般研究B(平成4年度,5年度,6年度)としてスタートし,今回は2年目の平成5年度の研究成果について報告する. 1 調査対象現場と対象数 亜熱帯地域(平成4年度)における調査で対象とした業種と対応するように関東地域(平成5年度)に位置する同業種及び関連事業所に従事する勤労者(828名)を対象とした. 2 調査方法は平成4年度と同じ 3 調査結果 (1)東大式健康調査の結果 作業者の属性、職種、HPI、担当作業に対する意識,疲労感別健康度の比較を行った.担当作業に対する意識として、作業変更願望、作業への興味、担当作業における能力発揮等訴え強度と若年層においては精神的側面、中高年令層は身体的側面の各尺度得点との間に有意差がみられた。心身症と神経症の判別診断値による心身の健康度の評価では、担当作業に対する意識の高低が健康水準の高低に影響を与えている。また亜熱帯地域においては見られかった勤務体制別健康度の比較を行った.2交代、3交代制の勤務体制下の中高年令者群の目の疲れ、消化器系などの身体的訴えや抑制性、情緒不安定性などの精神的訴えの高い得点が心身症傾向をもたらしている。疲労感については,精神的疲労感と心身全体の健康度との関連が示され、疲労感の強い人ほど心身症、神経症の傾向にあることが判明した。職場ストレスの身体化somatization、神経症的精神化,neurotic psychization作用が亜熱帯地域と同様に観察されたことは、自然,社会文化的環境要因は特異的要因としての作用でなく,職場ストレス要因と複合して作業者の健康に影響を与えているものと見られる. (2)タイプA行動特性の波紋 成人病リスク管理の立場からタイプA特性を有する群における身体的健康指標について、非タイプA特性群と比較した。タイプA特性を有する群の40、50才台の肝機能系、血液系などの測定値が有意に高値を示し、臨床医学領域においての報告と同様な結果がえられた。タイプA特性群に対して成人病疾患の予防管理の必要性が示唆された。この点、昨年報告した亜熱帯地域の結果とは異なり、地域差が認められた。タイプA特性を有する群の年齢分布は20、30才台に多く、この年齢群は企業内の第一線力である。タイプA特性群の企業貢献度を評価する意味で、作業意識、モチィベイション等との関連をみた結果、タイプA特性群では疲労の訴えや仕事の要求度は高くなるものの職場における良好な人間関係の維持への貢献が観察され、経営管理、職場管理においるポジティブな側面の存在が明らかになった。職場管理上、タイプA行動特性の表裏を観察することが出来た。亜熱帯地域におけるタイプA特性群の身体的健康指標のとポジティブな関係と共に本研究における新しい所見である。 4 平成6年度調査予定 (1)寒冷地域におけるデータ収集 (2)総合分析・評価
|