本研究は紫外線レーザーを光源とする共焦点顕微鏡システムを作製し、特殊なレーザー走査様式を用いる事によって細胞内Caイオン濃度の初期変化部位を特定しCaイオンと細胞機能間のダイナミクスを明らかにする事を目的とするものである。細胞応答と細胞内Caイオン濃度との関連を電気生理学的観察結果と対応させた研究は研究代表者の研究室を始めとして国内外に多い。しかしながら、大半の研究が電気現象を細胞体全体のCa応答と対比させた研究であり、細胞膜直下あるいは細胞内小器官レベルでの局所的なCa応答はこれまで問題とする事ができなかった。本研究は共焦点顕微鏡を応用する事によって高い空間解像度を実現し、さらに細胞の示す電気的な応答との関連において細胞内Caイオン濃度を始めとする各種細胞内物質の挙動を明らかにすることを試みるものである。非常に精細な研究の実現が可能であり高い学術的な意義を持つと考える。 平成5年度までの研究は、装置の試作を中心として来た。その結果、イカの成果があがった。(1)UVレーザーを用いた、共焦点観察ができるようになった。これにより、indo-1などの2波長性の蛍光指示薬を用いる事が可能になった。(2)UVレーザーを用いて細胞の限局された領域を照射し、細胞内に充填したケージCaイオンを励起し細胞内フリーCaイオン濃度を増大させその結果を可視光域でのCa指示薬(fluo-3)で観察する事ができた。(3)汎用のデータ収集装置を用いる事により、画像情報の変化を長時間にわたって記録する事ができるようになった。長時間観察の結果は教室内のネットワークにより高速のワークステーションに転送し処理するシステムができつつある。(3)に関しては三月始めの現時点では、多少の使い勝手上の問題が残っているが解決しうる問題である。(4)除震対策が完成しパッチ電極による電気現象の記録と細胞現象の画像記録を同時に行えるようになった。パッチ記録下における膜脱分極に伴う細胞内Caイオン濃度変化を観察する事ができた。 これらは本研究計画を企画した時に目標とした課題であり、その全てが技術的には実現されたものである。今後は、学問的な知見の集積を進めたい。
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