平成5年度の研究計画として、当初、以下の4点をあげた。各研究項目の実績の概要をまとめる。 1)Stimulus Seeking Behaviorのための刺激呈示用ソフトおよび解析用プログラムの開発について、予定通り完成し実験に使用した。しかし、被験者に呈示される刺激内容(3文字の有意味または無意味綴り)については、刺激希求という観点から必ずしも適切なものとは言えず、色彩、パターンなど含め改良の余地がある。 2)生理的データの解析プログラムについて、パワースペクトル分析など既存のソフトを改良するなど本実験に適合するプログラムを作成した。特に、6時間の閉鎖感覚遮断中の心拍変動スペクトル分析による、high frequency componentとlow frequency componentの計測に基づく交感-副交感神経活動の変化には著しい個人差が生じた。各被験者の閉鎖ストレスに対する耐性・適応性を予測するさいの興味あるデータと言える。 3)日本版Sensation Seeking Scale(SS尺度)の標準化のために、さらに300名(総計500名)のデータを収集、解析する計画を立てていたが、現在のところ約100名分のデータが不足している。 4)当初、6時間の閉鎖感覚遮断実験を16名の被験者に実施(平成4年度と合せて32名)することになっていたが、昨年度の研究結果を検討し、約90分の周期を持つウルトラディアン・リズムの影響を明らかにすることが重要と考え、短期2-3時間の実験を延べ14名の被験者に実施した。その結果については現在検討中であるが、閉鎖ストレスの耐性を予測するうえで、各個人の生体リズムの特性という新たな観点から考察する必要がある。
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