言語発達初期における語彙の獲得はめざましいスピードで進んでいく。これを説明する仮説はいくつか出されているが一つの理論で説明できる段階には至っていない。本研究では動詞の獲得に重要とみなされる母子相互作用の文脈に焦点をあて、縦断調査により、初語期(13カ月)および二語文期(20カ月)の母子場面に見られた子どもと母親の言語および非言語的コンテクストについて検討し、子どもの動作語の獲得にかかわる母親の相互作用の方略を捉えるための試みについて考察した(荻野、1994;1995)。 これまでの動作語の習得に関する横断調査では(森岡、飯高1990)幼児の生活場面で観察される動作を絵カードに表し、加齢にともなう動作語の理解および表出を検討した。この知見をふまえ健常な3、4歳児について同じ動詞を動画刺激によって提示し、その行為の説明を求めて、絵カード提示条件での反応と比較した。その結果、動画刺激提示条件の方が、一つの動作に対する説明の発話数や、動詞を含む説明文の種類の増加が認められた(中根、伊東、飯高1994;1995)。 上記学習システムは、ビデオ映像とそれに対応するアニメーションより構成された。このシステムを実際の指導場面へ適用して検討した結果、動作語の獲得には単一の対象物に一つの動作語を学習させるだけでは十分でなく、一つの対称物を多様に操作し、その行為を説明する動作語を習得させることが有効と考えた。そこで、対称物をしぼって幼児に操作させ、その様子をVTR撮影した動画教材を作成した。その結果、幼児がモデルの動画学習システム条件の方が、アニメや成人をモデルにしたシステム条件より、健常児と発達遅滞児双方に動詞の意味のひろがりが認められた。 以上は発達遅滞児の動詞学習システム作成とその指導に際し、有益な知見となることが示された(増田、飯高、伊東、1995)。
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