研究概要 |
平成5年度に最初に浜松ホトニクスが製作した750ミクロン厚のシリコンPINダイオードは,リーク電流が多くわれわれの目標であるエネルギー分解能に到達しなかった。750ミクロンの空乏層を得るために必要な電圧は500Vにも達した。これらの原因は素材の品質によると考えられる。我々の試験結果を受けて第2段階としてヨーロッパの素材メーカーより高純度で高い比抵抗をもつ素材を用いる事とし,製作を開始した。 我々が開発した井戸型フォスウイッチカウンタでは,結晶内部に含まれる放射性同位元素によるバックグランドが全体のバックグランドレベルを決める所にまで低バックグランド化を進めている。この放射性同位元素の混入は素材を高純度化することで減らす事ができる見通しがついた。現在は結晶製作に使用するルツボなどに含まれるウラン,トリウム系列の放射性同位元素が問題となる事がわかっている。本試験研究を通じてGSOあるいはYAPといった新しいシンチレータが放射化を考えたときに従来のNaI(T1)ととってかわる性能を示す事がわかってきた。エネルギー分解能もGSOの場合では,1MeV近辺でNaI(T1)と同程度のものが素材の高純度化を経て得られるようになった。 シリコンPINダイオードは,当初計画していた1mm厚のものが完成しておらず,平成6年度の課題である。無機シンチレータは,GSOに関して,我々が考えていたような方法で内部バックグランドを減らす見通しがたっている。読みだし用のアナログ回路に関しては池田が開発したシリコンダイオード用プリアンプおよびYAP/GSOとBGOの組み合わせのフォスイッチカウンタ用波形弁別回路は所定の性能を発揮している。
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