研究概要 |
本研究では、広い応用範囲を持つものとして、硬X線あるいはガンマ線の領域で高い感度をもち、エネルギー分解能に優れた検出器の開発を行った。100keVから1MeVのエネルギー領域では、これまでNaI(Tl)にシンチレータが使われてきたが、我々はそれにかわる二つの新しい無機シンチレータ、GSOおよびYAPの開発を日立化学(GSO)、Inst.of Nuclear Physics,Minsk,Belarus(YAP)と共に、行った。得られたエネルギー分解能は662keVでGSOは7%程度(FWHM)、YAPは5.8%程度(FWHM)である。YAPの光量はNdI(Tl)の35%程度が得られている。10keVから100keVにいたるエネルギー範囲では、ガスプロポーショナルカウンタが良く使われるが、数10keVのX線に対しては検出効率が低くなるため適していない。本研究では、従来の数倍の厚みをもったPINダイオード(500ミクロンから1mm)の開発を行った。エネルギー分解能は3keV程度である。 これらの二つの技術をくみあわせ、シリコンPINダイオードを低エネルギー側の、YAPを高エネルギー側の検出器として用い、井戸型のBGOシンチレータのシールドに埋め込んだ複合型の検出器、井戸型フォスイッチカウンタの開発を行った。この検出器は、次期科学衛星ASTRO-Eの検出器の一つとして採用されている。 フォスウイッチカウンタではYAPの信号をBGOの信号と分離する波形弁別回路が必要である。従来、用いられてきた回路では、数10nsの蛍光減衰時間を持つような高速のシンチレータからの信号を扱う事ができない。われわれは、この回路をバイポーラートランジスタのASIC技術を用い、モノリシワクICとして開発を行った。衛星に搭載するために必要な耐放射線、低消費電力などを考慮しながらデザインが進められ、試作チップが作られた。現在、2段階目のデザインが行われている。
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