昨年度に引き続き到達温度10mK、約1kgの吸収体結晶を冷却できる専用低バックラウンド希釈冷凍機を製作した。地下実験室への設置が可能な仕様になっており、また、長時間の運転に耐えるようになっている。まもなく試運転が行われる予定である。 暗黒物質候補の素粒子ニュートラリーノ検出用のフッ化物結晶を用いた極低温粒子検出器(ボロメータ)を高感度にするために、NTD法(Neutron Transmutation Doping)によるゲルマニウムサーミスタの開発を行った。これは、高純度のゲルマニウム単結晶に熱中性子束をあてることによりアクセプタ、及びドナー不純物をドープする方法である。原子力研究所3号炉を用いて最初の照射が行われたが、低温での抵抗値が高すぎるという結果となり、照射した中性子束が十分でなかったことがわかった。現在中性子束を増やした第二回目の照射が終了した段階である。 さらに、Oνβ^+β^+(ニュートリノのでない二重ベータ崩壊)核化合物を用いたボロメータの開発研究を行った。モリブデン、酸化ニッケル、酸化亜鉛、硫化亜鉛、テルル化カドミウムの結晶についてそれぞれ試みたが、硫化亜鉛とテルル化カドミウムについて、一応ボロメータとして作動することがわかった。
|