研究分担者 |
水田 正志 日本電気(株), 基礎研究所, 部長
坂 貴 大同特殊鋼株式会社, 研究開発本部, 主任研究員
神谷 芳弘 豊田工業大学, 工学部, 教授 (20022543)
堀中 博道 大阪府立大学, 工学部, 講師 (60137239)
吉岡 正和 高エネルギー物理学研究所, 加速器研究系, 助教授 (50107463)
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研究概要 |
平成5年度中のあげた研究実績を以下の3つのテーマに分けて報告する。 (1)〈Strained GaAsフォトカソードの開発〉 名大で世界初の80%を越える偏極度を達成したフォトカソードであるが,量子効率の低さ(0.1%)が課題として残っていた。そこで新たな発明として,「共鳴吸収型フォトカソード」の開発に着手した。この原理は電子ビームを取り出すGaAs層の奥に誘電体多層膜の鏡を作り,励起レーザー光をこの鏡とGaAs表面の間に閉じ込めることにより,光の有効吸収長を伸ばすことにある。偏極度は従来の高い値を維持できる。成功した最初の例では,1.3%で70%の偏極度を実現することができた。このアイデアは他の種類のフォトカソードにも適用できる。この成果は既に論文となっており国際会議でも紹介して反響を呼んでいる。 (2)〈超格子フォトカソードの開発〉 超格子の場合も,NEA表面を安定化させるためにp型ドープ量を深さによって変える変調ドープの方法を編み出し,量子効率を向上させることに成功した。SLACで測定したこのカソードの量子効率は2.0%に達し,名大で測った偏極度は70%を記録した。これは超格子カソードの実用化も有望であることを世界で初めて証明したものと考えている。現在さらに偏極度の方も高くする試みを続けている。 (3)〈高エネルギー加速器用偏極電子銃の作製〉 5.8%の量子効率をもつバルクのGaAsフォトカソードの試験に成功し,70KeVの偏極電子ビームが引き出せる段階にきた。現在は電極部分の放電暗電流を減らし,ビーム移送系を完成して,次の目標である「パルス・レーザー励起による高いピーク電流値をもつビーム生成」を目指して作業を続けている。
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