位相共役波のもつ波面修復特性を利用した顕微システムを、著しいフォトリフラクティヴ特性を示すチタン酸バリウム(BT)、鉄添加ニオブ酸カリウム(KN)あるいは珪酸ビスマス(BSO)を用いた光混合法により試作した。この顕微鏡は、視野のなかで動いている物体のみを抽出することを可能とする。この時、計算機を用いた画像処理は必要としない。従って実時間で動物体を見ることができるという特徴を持つ。 初年度(1992年度)はこれら結晶のフォトリフラクティヴ特性(位相共役波反射率、応答時間)を新しく発展させた動格子法を用いて詳細に調べた。特に2光波混合法、4波結合法を用いて、極めて一般的にフォトリフラクティヴ特性を支配する物性量(例えばドナー密度、アクセプター密度、イオン化断面積、再結合定数など)を決定できた。一方、位相共役波反射率を、4波結合方程式の厳密解から計算機実験により求めるプログラムを開発し、とくに多重解をもたらす実験条件を決定した。 次年度(1993年度)においては、実際に位相共役顕微鏡を組立て、ホログラム位相物体をピエゾ素子法によりいろいろな速度で移動させ、観測される物体の可視度を移動速度の関数として詳細に観測した。レンズによりフーリエ変換した1次スペクトルの強度は、速度および入射レーザー強度により変化することを定量的に明かにし、これより位相共役顕微鏡として機能する最小移動速度を決定できた。本研究で開発した位相共役顕微鏡は1.6mWという低出力で機能した。
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