研究概要 |
平成4年度に製作した波長掃引型分光器の詳細な試験を中心に研究を行なった。二酸化塩素(OClO)及び一酸化臭素(BrO)による可視部の吸収は0.1%のオーダーであり、二酸化窒素とオゾンの吸収は1%のオーダーである。ここでは測定器の精度を確かめるために二酸化窒素(NO_2)・オゾン(O_3)の吸収が大きい430〜502nmの可視領域に測定域を絞った。地球大気外から入射する太陽放射は天頂で散乱されて地上へ到達する.この散乱を受けた光は昼間と薄明時(太陽天頂角90°付近)において成層圏中(高度25km付近)を通過してくる際にその光路長が約20倍薄明時の方が長くなっている.このようにして得られた2つの吸収量の異なるスペクトルどうしのスペクトル比を求め,それと既知の値である二酸化窒素・オゾンの吸収断面積をLambert Beerの法則を用いて最小二乗法の適用によりフィッティングを行い二酸化窒素とオゾンの全量を求めた. 豊川の名大太陽地球環境研究所で、1992〜1993年に連続観測を行ったデータを詳細に解析した結果、観測されたスペクトル比の中に波長に対して吸収物質に依らない放物線形の大きな構造を見出した。また、その除去方法を解析プログムラに追加した。この改良の結果オゾン、二酸化窒素の測定精度±1%以内を達成した。全吸収量からNO_2,O_3の吸収量を引いた残差は0.1%以下の大きさであり、極域OClO,BrOの吸収量より小さい。このことからこの分光器はOClO,BrOを検出する能力のあることが分かった。一方OClO,BrOの吸収断面積をアメリカの室内実験グループのより最新のデータを入手し、解析用のプログラムに組み込む作業を行なった。この解析プログラムで観測データを解析するとOClO,BrO濃度は誤差の範囲で無視できるくらい小さいことが分かった。これは中緯度での光化学理論と一致する。
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