研究概要 |
本研究の目的は,共役ポリイン構造を有する新しい抗菌剤を開発するとともに,ポリイン化合物の化学を開拓することである。 1)ポリイン化合物の新しい合成方法論 片端をシリル基で保護したヘキサトリインやオクタテトラインが共役ポリイン化合物の合成中間体として有用であることを示した。リチオ化,求核的アルキニル化,アリールカップリング反応を検討した。また,共役ポリイン化合物のポリマーフィルムをSO_3でドープすると10^<-3>Scm^<-1>の導伝性を示すことを見いだした。 2)アセチレンの新しい活性化法 不安定な共役ポリイン化合物の合成には,穏やかな条件下で進行する反応が必要である。SnCl_4とBu_3Nを組み合わせると,アルデヒド,アセタール,および不飽和ケトンのアルキニル化が行なえることを見いだした。この研究の途中で,炭素-炭素三重結合へのカルボスタニル化と言う新反応を発見した。これによって,従来困難とされてきた四置換オレフィンの立体選択的合成やフェノール類のアセチレンによる直接ビニル化反応が行なえることになった。 3)カリオイネンシン類の合成と生物活性 ポリイン抗生物質カリオイネンシンと関連物質の抗菌活性を比較して,分子構造と活性の関係を調べた。この天然物の初めての合成に成功し,数種のアナローグを合成した。カリオイネンシンの(CH_2)_4COOH部をメチル基で置き換えた化合物の活性は天然物と変わらないことより,共役ジエンテトライン部が活性の発現に必要であることがわかった。この化合物は,MRSAを含む細菌類や真菌類に対し,幅広い抗菌活性を示した。一方,テトライン部とジイン部が共役していない化合物が皮膚糸状菌に対して極めて強い活性を示した。
|