研究概要 |
最近のめざましいNMRスペクトル法の進歩により、天然有機化合物の構造決定法は急速に変化しつつある。以前は解析不可能であった複雑な有機化合物でも、高磁場NMR(600/500 MHz)と2次元スペクトルを用いることによって、構造が決定できるようになった。しかし、分子量が2000を越えると、膨大な2次元データの解析が必要になってくるので実際は不可能なことが多い。 本研究では、最近開発された3次元NMR法を天然物の構造決定に導入するための方法論(測定法とデータ解析)を開発し、実際の天然物(分子量3400の天然有機化合物)に適用した。 3次元NMRの特徴を生かすために最適と考えられる^<13>C(縦)-^1H(横)-H(奥行)の展開は、^<13>Cの天然存在比(1.1%)の試料では、測定時間の制約が大きく実用的でないので、試料の同位体存在比を4%程度に強化することを試みた。すなわち、単細胞プランクトンに対して^<13>C強化炭酸塩(Na_200_3)の取り込み培養を行い、^<13>C濃度を約4%まで強化した試料を調制した。本研究では、4%強化の試料を用いることにより発生する問題(インバース法のデータ取り込みのセンターノイズやT1,T2ノイズの問題など)があるので、最新のfield gradient法の適用を試みて解決を計った。実際に分子量3400のポリエーテル化合物の3次元HMQC-NOESYをfield gradient装置付分光計(A-600,日本電子製)を用いて測定し、3次元データの解析を行った。今回は、1回の3次元測定から、^<13>C値で輪切りにした^1H-^1H相関スペクトル(通常の2D-NOESYい対応)が64枚得られた。このスペクトルの解析を詳細に行って、既知の構造と比較検討した結果、測定法の実際面での改良を行えば、基本的には今回の3次元法は適用可能であり、非常に有効な構造決定手段となり得ることを世界に先駆けて実証した
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