高温下でのX線回折実験によって鉱物の構造変化や相転移等の現象をその場観察することは、惑星物質の生成過程を研究するに当って重要である。しかしながら、地球・惑星の主要な構成物質である珪酸塩鉱物の形成過程に最も関与する1000度から1500度の温度範囲を安定して長時間保持し、かつ少ないコンタミネーションと雰囲気制御を可能ならしめる加熱装置は従来開発されておらず、その実現を目指した。本研究では、上記の目的を達成するべく微小領域赤外線導入炉を開発した。即ち回転楕円体の形状に成型し金メッキを施した小型ミラーの一方の焦点に赤外線ランプを、また他方の焦点に端面と側面を鏡面研磨したロッドを設置する。赤外線ランプから放出された赤外線の内およそ80%はロッド上面に集光される。ロッド上面に入射する赤外線は全てロッド内部に取込まれロッド内を全反射しつつ試料直前まで導かれる。更に高温を実現するためにはレンズ系を利用して集光する方法もあるが色収差を除去することが困難である。そこで導入ロッドにテ-パを付け全反射によって集光する機構を開発した。導入ロッドとしては赤外線に対する高い透過率と高い屈折率を有するものが適当であり、石英ガラスとサファイアを選択した。サファイアは加工が困難であることと高価格であるために今回は先端テ-パ部の試作のみに留めた。最も高温が得られたのは石英のロッドを先端部のみ頂角20度の円錐状に鏡面研磨して、さらに赤外線洩れを防止するために先端部を白金コーティングしたロッドを使用した場合であった。様々な物質の融点を利用して性能検査を行なった結果、赤外線を良く吸収する試料を1400度までの温度範囲で加熱することが出来た。均一に加熱可能な領域は5mmφであった。また装置をX線実験装置への設置しプリセッションカメラに取り付けて加熱実験を行った。
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