研究課題
試験研究(B)
平成6年度は本研究の最終年度である。本年度は、アユミ工業(株)で製作されたイオンビーム注入制御装置を用いてArなどのガスクラスターの注入制御ができるようにした。また、ArやCo2など得られた種々のガスクラスターをイオン注入し、その結晶性や表面・界面特性を現有の高解像度電子顕微鏡などで評価し、低エネルギーイオンビームによる照射の効果を明らかにした。具体的には(1)ガスクラスターイオンをSi基板に照射した場合、単原子や単分子イオンの照射に比べ、損傷が非常に小さいことを明らかにした。(2)ガスクラスターイオンビームでは、固体表面に高密度照射が可能なため、従来のイオンビーム法では達成できない高スパッタ率が得られ、またラテラルスパッタ作用によって表面は超平坦になることが分かった。(3)ガスクラスターイオンビームの入射エネルギーを制御することにより、固体表面に極く浅いイオン注入層を形成することが可能であることを明らかにした。(4)クラスターイオンと固体との衝突過程を分子動力学法によって計算機シミュレーションし、実験結果との対応を行った。この結果、上述の低エネルギー大電流効果を確認し、装置の基本特性に関する有用な計算結果を得た。以上、試作したクライスターイオンビーム装置は、次世代LSIの製作に必要な(a)浅いイオン注入、(b)表面の電子レベルの平坦化、(c)低損傷表面クリーニング、(d)高効率スパッタリング、(e)表面改質による薄膜形成などのプロセスへの応用が可能となった。
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