研究概要 |
反射損失の少ない銀鏡を用いたダブル分光器にノッチフィルターを組み合わせ極微弱ラマン散乱スペクトルの測定システムを試作した。レイリー散乱の少ない試料を用いて、100-500cm^<-1>の領域で微弱ラマン光が測定できることを確認した。さらに高量子効率のCCD検出器を用いて微弱光の測定を行い、0.1フォトン/秒の検出が可能であることを実証した。このシステムを用いて、C_<60>結晶および半導体超薄膜の評価を試みた。 (1)C_<60>結晶の測定 C_<60>結晶は励起レーザー光の照射によって構造変化を起こす。従って非常に微弱な励起強度で測定する必要がある。本試作のシステムを用いて10μWのパワーでC_<60>結晶のラマンスペクトルを測定することができた。 (2)ZnTe薄膜の評価 2-100nmの厚さを持つZnTeエピタキシャル膜の多重LOフォノン線を共鳴条件下で測定し、この共鳴プロファイルが膜厚に非常に強く依存することを見いだした。ZnTe膜が薄くなるにつれて高次のLOフォノン線が消滅し、またラマン線が僅かに高波数側にシフトすることを観測した。このことからGaAs上のZnTe膜は界面近くでミスフィット転位の発生により格子緩和を起こしているため結晶性が悪く、界面から遠ざかるにつれ次第に結晶性が良くなってくると結論した。 (3)SOI(Silicon on Insulator)膜の評価 200nmの膜厚のアモルファスシリコン薄膜を熱処理し結晶化させた場合、サブミクロンサイズの微結晶粒が成長していることが確認された。さらにシランとジシランガスを用いて成長させたアモルファス膜ではシランを用いた膜の方が結晶粒成長の速度が早いことが分かった。 上記以外に低温成長させたGaAsエピタキシャル膜,GaAs上に成長させたGaSbエピタキシャル超薄膜(2.5-100nm)、TiC上のSiC膜の結晶性や歪みなどをラマン散乱測定によって評価した。
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