研究概要 |
(A) SmC,SmCA相における拡散過程 1)透過FRS法により反強誘電性液晶の拡散挙動を測定した。SmC-SmCA移転点において層内、層間方向ともに拡散定数は不連続に減少し、分子が一層ごとに逆向きに傾く反強誘電的分子配列と、傾く方向が同じ強誘電的分子配列との違いが、拡散過程に反映されることを確認した。 2)SmC相への相転移においては層内、層間ともに拡散定数が不連続に増加した。このことから相転移に伴う分子の再配列と、相転移近傍の分子のゆらぎが拡散に著しく影響を及ぼすと考えられる。 3)液晶を試料としたFRS法においてもComplementary grating effectが現れることが確認された。これはメチルレッドの光異性化による相転移温度のシフトと関連していると考えられる。 (B) 液晶-固体界面における拡散過程 1)少なくとも光の侵入長が200nm以上の領域においては、バルクからの情報の方が支配的に結果に反映されることがわかった。 2)等方相-ネマティック相転移近傍で得られる結果は、界面からのシグナルにComplementary grating effectが関与している可能性を示唆するものである。これが事実ならば、従来観測されてきたネマティック相での全反射FRS法のシグナルに見られる初期の速い緩和は、この効果によって見かけ上速い緩和になってしまったものと考えることもできる。
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