本研究は、極高真空(圧力が10^<-10>Pa以下の超高真空)を測定するための真空計の開発に関わるものである。極高真空領域の真空計としては、熱陰極型電離真空計が有望であるが、極高真空では、熱電子がイオンを発生させる確率が小さくなるために測定が困難であるばかりでなく、無駄に陽極を衝撃する電子が熱やX線を発生して測定が妨害される。本研究では、特殊な電極構造(直列静電レンズと凹面鏡電界)によって電子に往復振動をさせ、電子の飛行距離を長くして、信号対雑音比を改善している。 電極間電位分布、電子とイオンの軌道等に関して充分な計算機シミュレーションにもとずいて製作した第1号、第2号の試作電極による実験を、実際に小型装置の中に実現した極高真空中で推進するとともに、その経験を踏まえて、第3号試作電極のシミュレーション設計を行い、製作した。 第1号、第2号試作電極で得られた重要な成果の一つは感度の値そのもので、比較的広い動作条件範囲で、容易に、安定に、80Pa^<-1>以上の値が得られた。これは、従来のほとんどの熱陰極型電離真空計の感度(0.1〜0.4Pa^<-1>)のおよそ400倍で、これだけでも、この真空計が従来の普通の熱陰極型電離真空計のおよそ400分の1の圧力を測定できる事を示して居る。第2の重要な点は、電極などからの脱ガスの影響である。これの重要性は充分に予測されて居たが、実際に極高真空中で実験することによって、改めてその重要性が再確認された。また各電極に電位を与える為の電流導入端子部からの微量の真空洩れなども、予想より遥かに厳しい影響を与えることが再確認された。 これらの諸経験を踏まえた第3号試作電極についての実験結果が年度内に得られなかったことは残念であるが、一年以内に成果を得る予定である。
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