研究概要 |
鋼焼なまし材より作製された中央貫通試験片の予き裂先端を囲む領域にダイヤモンド圧子を用い、荷重方向およびこれと直角方向に20μm間隔の格子線を描いた。この試験片についてひずみ比Rε=-1.0の変位制御繰返し変形試験を行い、格子法により、主として一サイクル中のき裂先端近傍のひずみの変動を計測するとともに、き裂開閉口挙動を調べた。これらの計測の画像処理解析手法を検討した。得られた主な結果は次のように取りまとめられる。 (1)き裂先端近傍において荷重軸(Y軸)に対して垂直な方向を基準とした角度θ≒±60゚の方向に沿い、垂直ひずみεyおよびせん断ひずみγrθの集中域が形成される。また、き裂先端部では引張行程において顕著な正の塑性変形が生じるため、続く圧縮行程の最終点(ヒステリシスループの圧縮側頂点)においても正のひずみが残留し、負のひずみはほとんど生じない。 (2)(1)と関連し、本研究で対象とした大変形を伴う繰返し変形下においては、応力-ひずみヒステリシスループの圧縮側頂点においてもき裂先端は閉口しない。このような正のき裂先端開口変位は繰返し変形の進行につれて徐々に増加する。 (3)1サイクル中のき裂先端近傍でのひずみの変動幅はεyおよびγrθともにθ≒±(60゚〜90゚)の辺りで最も大きい。このような変動はこれら二つのひずみのうちγrθにおいて顕著である。 (4)平成4年度に購入した走査型電子顕微鏡(JSM-5300)およびパーソナル画像解析システム(ピアス3)を用い、SEM像を通じ上述した格子点の変形前後の座標点(Xo,Yo,Zo)および(Xi,Yi,Zi)をパーソナルコンピュータに読込ませることを可能にした。
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