温度計測で用いる蛍光剤を決定し、その蛍光発光特性および消光性等を調べ、蛍光剤の最適濃度と測定可能な温度範囲を明確にした。温度と発光強度の関係を示す関係式を求め、画像処理温度計測システムを構築した。温度計測の不確かさ解析を行い、熱電対との同時計測の結果がその不確かさ範囲内にあることを確認した。 蛍光剤として、蛍光発光強度の温度依存性が高いローダミンBを選択した。これは、水溶液中の酸素や塩化物イオン等により消光作用を受け、時間経過にともなって発光強度が低下する。この影響は、溶媒(水道水)を一旦沸騰させることで抑えることが可能となった。蛍光強度は励起光、蛍光剤濃度等に比例するが、励起光の減衰も蛍光剤濃度に依存するため、蛍光強度を最大とする濃度を求めることができる。光線パスを10cmとすれば最適濃度は約1mg/lであった。測定可能温度範囲は10〜70℃であった。温度と蛍光発光強度の関係式はペルチエ素子を利用した蛍光剤の温度制御によって、発光強度を反復的に計測することで温度に関する多項式近似によって求めた。 温度計測システムは励起用アルゴンレーザ、CCDカメラ、VTR、画像処理装置およびホストコンピュータで構成し、面的に温度を計測するためのソフトウェアを上記の関係式をもとに開発した。このシステムは、従来開発された速度計測システムと融合され、温度と速度の同時計測が可能となった。温度計測における不確かさは参照温度と計測温度との差が10℃以内において±1.2℃であった。計測装置検証用に二次元自然対流場を実現する流路を製作し、本計測システムによって温度と速度の面的な瞬時の分布を時系列に計測した。また、熱電対との同時計測によって本計測結果が上記不確かさの範囲内であることを確認した。本計測システムが乱流熱輸送機構の解明に有用であることが示された。
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